SMO(治験施設支援機関)とは?主な役割や業務内容、CROとの違いを解説!

SMO(治験施設支援機関)は、医療機関で実施される治験をサポートし、各関係者の教育や調整のサービスを提供する組織です。数多くのプロセスが求められる治験を円滑に行い、被験者の安全性や人権を尊重した適正な進行を支援します。

本記事では、SMOの概要や登場した背景、似た組織であるCROとの違いを解説します。SMOの業務範囲や具体的な業務内容もあわせて紹介します。




SMOとは?

SMO(Site Management Organization)は和訳すると「治験施設支援機関」であり、治験を実施する医療機関と契約し、治験業務を支援する組織のことです。

治験では、治験を依頼する製薬会社との連絡や被験者の募集、GCP(医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令)に基づいた適正な手順の実施など、煩雑で多岐にわたる工程が求められます。医療機関に在籍する人材だけでは、業務過多になる可能性も否定できません。

SMOは、治験を実施する医師や看護師、事務局員の業務の一部を受託または代行して、治験実施機関の負担を軽減します。また、治験の実施準備支援や臨床試験の実施支援、治験後の報告書作成支援のサービスを提供し、スピーディで質の高い治験の実施をサポートします。


SMOが登場した背景

SMOが登場した背景には、GCP(医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令)改正による実施基準の厳格化とそれに伴う治験業務の煩雑化が挙げられます。

従来、治験は大学病院やその関連病院などの大規模医療機関を中心に実施されていました。治験による臨床的な評価は、医薬品の開発で欠かせないプロセスであり、適正な治験実施が可能な医療機関は限られていたためです。

治験は、医薬品の臨床試験の実施の基準に従って実施されますが、1998年4月から全面的に施行された新GCPでは、治験実施の基準が厳しくなり、必要な手順が増加して煩雑化しました。これにより、既存の大学病院などで実施できる治験数が限界に達し、海外での治験が主流となる「治験の空洞化現象」が起きます。

これらの背景のもと、国内では大規模医療機関に代わる治験実施機関が求められ、中小の医療機関での治験の実施と、その実施を支援するSMOが注目されました。2003年7月のGCP改正では、SMOの業務が法令上に明文化され、その後は生活習慣病の治療薬の開発を中心にSMOが盛んに利用されています。


CROとの違い

CRO(Contract Research Organization)は和訳すると「医薬品開発業務受託機関」であり、治験を依頼する製薬企業の業務を受託または代行する組織です。

SMOとCROの違いは、SMOが「医療機関」から業務を受託して支援を提供する一方、CROは「製薬企業」から委託を受け、本来製薬企業の業務である治験の依頼やモニタリング、管理業務を代行する点です。

SMOとCROは業務を委託される機関が異なることから、両者が行う業務も異なります。SMOは主に医療機関で治験を実施する業務を行い、CROは委託を受けた製薬企業の計画に沿って、治験のマネジメントや管理、データの処理などを主な業務としています。

ただし、SMOとCROは立場が異なりますが、円滑で適正な治験を支援する点では共通する組織です。SMOとCROはそれぞれの立場から互いに協力し、健全な治験実施のサポートを提供しています。



SMOの業務範囲

SMOが治験で実施可能な業務は、国が定めたGCPに規定されています。GCPで規定されたSMOの業務範囲は次のとおりです。

  • 治験事務局の設置・運営に関する業務
  • 治験の実施に関する手順書の作成業務
  • 治験審査委員会の事務に関する業務
  • 治験薬の管理に関する業務
  • 治験の被験者に対する説明と同意の取得の補助業務
  • 治験の実施に関する業務
  • 治験依頼者が行うモニタリングおよび監査ならびに治験審査委員会および規制当局による調査への協力
  • 症例報告書の作成
  • 治験中の副作用報告

SMOは、実施医療機関で発生する事務的な業務の多くを受託できます。ただし、医療法や労働者派遣法などで制限される業務や、実施医療機関ではなく治験を依頼する製薬企業が本来行うべき業務などは、SMOの業務範囲外です。



SMOの業務内容

SMOは、適切で安全な治験の進行のために、様々な支援を提供します。以下では、治験の「開始」や「実施」、治験審査委員会や治験コーディネーターに関するSMOの具体的な業務内容を解説します。


治験の開始に関する業務

治験はGCPで定められた手順や基準を満たす必要があり、治験を開始するための事前準備が必要です。

例えば、実施医療機関の標準業務手順書(SOP)の作成支援はSMOの業務の一例です。標準業務手順書は治験の実施に際して遵守する事項や責任を示した書類であり、GCPで作成が義務付けられています。

その他、治験に関わる医師や看護師、スタッフの教育や研修、GCPに対応する書式の提供、治験依頼者との治験資材の確認、院内説明会をはじめとする治験の開始に関する幅広い業務を支援します。


治験の実施に関する業務

治験の実施に際し、SMOは治験全般の窓口になる治験事務局の立ち上げや運営サポートを行います。治験事務局は治験の円滑な進行を支援する部署で、治験スケジュールの作成や治験依頼者とのプロトコルの把握、必要な文書の作成や各種委員会との調整などを担当します。

なお、SMOで治験事務局業務を支援するスタッフは「治験事務局担当者(SMA:Site Management Associate)」と呼ばれます。後述する治験コーディネーターとは異なり、治験依頼者や医療機関内の調整をはじめ、治験が適正かつ円滑に進行するように裏方の事務を行う仕事です。


治験審査委員会の設立・運営に関する業務

治験審査委員会(IRB:Institutional Review Board)は、治験実施機関内に設置される委員会です。利害関係のない第三者の専門家で構成され、治験の倫理性や安全性、被験者の人権などを審査します。

治験実施機関では、IRBの設置が必須です。SMOでは、IRBの立ち上げや運営補助のサポート、審議資料の作成や委員会の会場設営、議事録の作成など、IRBの設立・運営に関する業務を行います。


治験コーディネーターの教育・派遣に関する業務

治験コーディネーター(CRC:Clinical Research Coordinator)とは、被験者と直接コミュニケーションを取り、人権や安全性の確保、治験の円滑な進行を支援するスタッフです。

CRCは、治験の同意説明や被験者の登録業務、CRF(症例報告書)の作成支援など、現場に赴いて治験の進行を支援します。SMOの役割は、CRCの教育や実施医療機関への派遣業務などです。

なお、SMOのサービスにはいくつかの形態があり、治験業務の大部分を支援する形態の他、CRCの業務のみを提供する場合もあります。既に治験事務局の機能がある医療機関ではCRC業務のみ、治験実施経験が少ない医療機関では治験業務の大部分の支援など、医療機関によってSMOの利用は使い分けられます。

CRCについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

▶関連記事:CRCになるには?仕事内容や年収の相場、必要な資質や役立つ資格について解説!



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▶監修:山本 佳奈

内科医、医学博士

1989年生まれ。滋賀県出身。医師・医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒、2022年東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)卒。南相馬市立総合病院(福島県), ナビタスクリニック(立川)での勤務を経て、現在、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員を務める。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)がある。


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