品質検査とは?品質管理との違いやメリット、医薬品製造における検査の種類をご紹介!
医薬品を製造する際には、必ず品質検査が実施されます。
本記事では、品質検査の定義や目的、品質検査と品質管理・品質保証にどのような違いがあるのかを徹底解説します。加えて、品質管理を実施するメリットやデメリット、医薬品製造における品質検査の種類が4つあることをご紹介します。
医薬品の製造に携わっている方や、これから医薬品製造業に参入しようとお考えの方は、本記事の内容を日々の業務にお役立てください。
品質管理に不可欠な「品質検査」とは
品質検査とは、仕入れた原材料や製造中・製造後の製品に関して品質を検査する(外観や機能を確認する)作業です。製造した製品が基準・仕様に適合しているかどうかをチェックして品質を担保することを目的として実施されます。
品質検査は、品質管理に含まれる取り組みのひとつです。品質管理には、品質検査の他に、工程管理や品質改善、品質試験、モニタリング、試験機器のキャリブレーションといった取り組みも含まれます。
工程管理は、製造が完了するまでの工程・原料・作業員・設備などを管理する業務です。また、品質改善は、製造工程にある問題点を探し、不具合・不適合品が発生した場合に原因を特定して再発防止策を講じる業務を意味します。そのための品質試験、分析試験による試験結果が重要です。
品質検査と品質管理・品質保証の関係を解説
「品質検査」という単語は「品質管理」や「品質保証」といった単語に似ていますが、意味が異なることにご留意ください。以下に、それぞれの業務内容を示します。
- 品質管理(QC、Quality Control):製造工程で品質に問題がないかを検証し、高品質な製品を生産することを目的とする業務
- 品質保証(QA、Quality Assurance):顧客(医療機関や患者など)に対して製品、サービス等の品質が所定の水準にあることを保証する業務
上述したように、品質検査は品質管理に含まれ、品質検査を実施することは品質管理や品質保証に役立ちます。ただし、品質管理や品質保証は、より幅広い領域をカバーする概念であり、品質検査のみで実現されるわけではありません。
品質管理と品質保証の違いや役割、仕事内容などについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
品質管理の一環として品質検査を実施するメリット・デメリット
品質検査は、製品の品質を保つために欠かせませんが、メリットだけでなくデメリットもあります。以下、メリット・デメリットに関して詳しく説明します。
品質検査を実施するメリット
品質検査には、以下のメリットがあります。
- 製品回収リスクの低減
- 自社製品・ブランドに対する信頼性の向上
- 競争力の向上
品質検査を実施すれば、不良品の発生率が低下し、製品回収リスクの低減を期待できます。また、一定の基準を満たした製品をコンスタントに提供し続けることで、自社製品・ブランドへの信頼性が高まります。
さらに、信頼性の高い製品を継続的、持続的に供給することで競合他社よりも信頼性が高まる可能性もあり、企業の競争力も上がることになります。そのための品質保証システムの構築が必須です。
品質検査のデメリット
品質検査を実施するデメリットは、以下のとおりです。
- 人的コストがかかる
- 設備導入や維持・更新費用がかかる
品質検査を実施するためには、作業に従事するスタッフの確保や設備の導入・維持をしなければいけません。その結果、人件費・設備費などの固定費が増加する点がデメリットとして挙げられます。
しかし、最新のテクノロジーを導入して作業を自動化・効率化すれば、少人数による品質検査を実現でき、ヒューマンエラーの発生も抑制できる場合があります。近年、AIを活用して製品の外観をチェックしたり、異物混入などを検知したりするシステムや装置も登場しています。今後も、AIの活用による業務改善は加速していきます。
不良品の発生などで製品回収をしたりブランドの信頼を落としたりすると、人件費や設備費を上回る損失を抱える可能性があります。経営を長い目で見て、適切な仕組みを(品質保証システム)導入すると良いでしょう。最近の品質問題多発による企業ダメージを考えればいかに正確な品質チェックが重要であるかが分かります。
品質検査の実施方法を解説
品質検査には、下表に示すように、主に4種類の方法があります。各方法の特長を把握し、状況に応じて使い分けましょう。
上表の分類方法は、「全製品を検査するかどうか」「書類のチェックのみで済ませるかどうか」という観点・切り口に基づきます。しかし、品質問題が発生した場合は受け入れ側に責任があります。どの検査を選択するかは企業の責任において決定すべきであり、コスト優先で決まるわけではありません。
医薬品製造における品質検査の種類
医薬品の製造では、原材料を受け入れてから最終的に製品として出荷されるまでに何段階ものプロセスを経ます。ここでは、検査の段階を4つのフェーズに分けて、各検査の概要を紹介します。
- 受入検査
- 工程検査
- 製品検査(最終検査)
- 出荷検査
それぞれに関して詳しく説明します。
受入検査
受入検査は、製造工程における最初の品質検査であり、サプライヤーから供給された原材料などが品質基準に適合しているかどうかをチェックします。
基準に適合していないことが判明した場合は、サプライヤーに返品します。なお、信頼できるサプライヤーから仕入れている場合は、実際の検査を省略し、書類のみでチェックを済ませる「間接検査」が実施されることもありますが、これは問題が無いことが保証されている場合のみ可能です。
なお、GMP基準では、受け入れ試験は必須事項です。
工程検査
工程検査は、生産工程の各段階で実施される品質検査です。製造ラインの各段階で品質をチェックすることで、早い段階で問題を特定でき、損失を最小限に抑えることができます。
なお、細かく検査を実施するほうが不良品の発生原因を特定しやすい一方、一定のコストはかかります。品質に影響がある重要工程と思われる工程は詳細に検査し、そうでない工程は簡便法での検査で済ませることも可能です。
製品検査(最終検査)
製品検査(最終検査)は、製品の完成後に実施される検査です。最終的な品質基準をクリアしているかどうかを確認します。不良品の流通を防止し、一定の品質を担保することを目的としています。
完成後に、品質検査を実施します。完成品の品質検査は規格に合格しているか否かをGMPに従って厳しく検査(分析)し、1項目でも規格値に不適であれば不合格となります。
出荷検査
出荷検査は、製品出荷前に実施される検査です。顧客・取引先に引き渡される前に、規定された基準に適合しているかどうかをチェックします。
「製品検査(最終検査)を実施すれば、出荷検査は不要ではないのか」とお考えの方がいるかもしれません。しかし、製品が完成した段階では品質基準を満たしていても、梱包・運搬・保管の過程で品質が劣化する可能性があるため、出荷検査を実施する必要があります。
出荷判定は、品質保証部の決められた人が責任を持って判定します。出荷承認のためには品質試験結果だけでなく、製造記録書や設備洗浄記録書、ラベル管理記録書、逸脱報告書、異常報告書、試験管理記録書、分析証明書を全てチェックした上で出荷判定の可否が行われます。
厳しい管理の下で医薬品は出荷されていることが分かります。
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AIなどを活用して、品質検査の自動化・効率化を実現しよう
品質検査は、医薬品を製造し、出荷する上で欠かせないプロセスです。まれに、品質検査を実施したにもかかわらず出荷時に不適になるケースもあります。分析法バリデーションで正確な分析法を確立した上で、品質検査を行うことが重要です。
また、安定性試験と併せて包装形態も考えた確実な品質保証が求められています。企業は信頼を失わないために、品質検査をGMPに従って着実に実施しなければいけません。
品質検査を行うにあたり、最新の装置・技術・サービス(AIを活用して作業を自動化するソリューションなど)を活用することで、効率化・省人化およびヒューマンエラー抑制できる可能性があります。今後ますますAIの活用は盛んになり企業は一層の効率化を図っています。
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▶監修:橋本 光紀
医薬研究開発コンサルテイング 代表取締役
九州大学薬学部修士課程修了後、三共株式会社の生産技術所に入社し研究に従事。その後、東京工業大学で理学博士号を取得し、M.I.T.Prof.Hecht研・U.C.I.Prof.Overman研へ海外留学へ。
1992年よりSankyo Pharma GmbH(ドイツ、ミュンヘン)研究開発担当責任者となり、2002年には三共化成工業(株)研究開発担当常務取締役となる。
2006年に医薬研究開発コンサルテイングを設立し、創薬パートナーズを立ち上げ現在に至る。
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