ブロックバスター(医薬品)とは?国内の事例や新薬開発の展望を解説!

「ブロックバスター」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?ブロックバスターとは製薬業界をはじめ、映画や広告、マーケティングなど様々な業界で使われる用語で、使われる業界によってそれぞれ意味が異なります。

本記事では、製薬業界でのブロックバスターについて詳しく解説します。国内でのブロックバスターの事例や、新薬開発における製薬業界の今後についても紹介するので、ぜひ最後までご一読ください。




ブロックバスターとは

医薬品におけるブロックバスターとは、従来の治療体系を変えるような画期的な薬効をもつ新薬で、売上が世界的にも高い製品のことをさします。明確な定義はありませんが、全世界での1年間の売上高が1000億円もしくは10億ドルを超える薬をさすことが多いです。

1990年代は日本国内でもブロックバスターがいくつも出現しましたが、近年は減少傾向にあります。減少傾向となった背景や要因については後述します。


日本国内のブロックバスターの事例

日本国内におけるブロックバスターの事例を発売された年代順に以下にまとめます※1※2。なお、括弧内は製薬会社の略称です。

上記の表からわかるとおり、2000年以降は減少の一途をたどっている状態です。

※1出典:日本薬史学会「薬史学雑誌」
「第2章 日本の創薬技術と医薬品開発の変遷(1980~2010)」
2014年49 巻 1 号 p.39-49
DOI https://doi.org/10.34531/jjhp.49.1_39
※2出典:中外製薬株式会社「日本の医薬品産業の課題と解決の方向性」



ブロックバスターが出現しづらくなった背景

ブロックバスターが出現しづらくなった要因には、以下の2点が挙げられます。

  • バイオ医薬品開発の遅れ
  • ビジネスモデルの変化

以下で、順番に解説します。


バイオ医薬品開発の遅れ

近年の医療用医薬品の売上上位は、バイオ医薬品が半数近く占めています。創薬トレンドの変化に伴い、バイオ医薬品のブロックバスターも増加傾向にあります。

欧米では、1990年代後半からバイオ医薬品の開発が活発に行われていましたが、日本では1980〜1990年代に低分子医薬品の開発で大きな成功を収めたことで、バイオ医薬品開発の着手が遅れました。また、バイオ医薬品は開発や製造に膨大なコストを要します。日本の製薬企業は欧米企業と比べて資金面で乏しく、研究開発投資が十分とはいえません。

現在も日本はバイオ医薬品で欧米に大きく遅れを取った状態が続いており、日本国内のブロックバスターが減少している大きな要因のひとつといえるでしょう。


ビジネスモデルの変化

2つ目の要因として、創薬業界のビジネスモデルの変化が挙げられます。今までは患者数が多い疾患を対象とした低分子医薬品が必要とされており、日本国内のブロックバスターの事例もほとんどが低分子医薬品の製品でした。

しかし、近年は個々の体質や病状に合わせた個別化医療が求められており、創薬トレンドも低分子医薬品からバイオ医薬品へと変わっています。ニーズの変化に伴い、国内開発を中心とした日本従来のビジネスモデルは行き詰まりつつある状態です。

バイオ医薬品を中心とした新たなビジネスモデルへの移行に向けて、大手製薬企業では「人材育成や大規模な設備投資」、創薬系バイオベンチャー企業では「シーズ開発研究とその有効性・安全性に関する更なる研究や調査、およびビジネスモデルの確立」が課題です。



新薬開発をめぐる製薬業界の今後

一般的に新薬の研究・開発には、10年以上の期間と数100億円以上の費用がかかるといわれています※1。薬剤費削減に向けた様々な取り組みが行われている昨今、製薬企業が新薬の開発を行うハードルは非常に高くなっています。

新薬の開発期間や費用の削減に向け、製薬業界で創薬DXが注目を集めるようになりました。創薬DX(Digital Transformation)とは、新薬開発プロセスを効率化するためにデジタル技術を活用する取り組みのことです。

基礎研究段階では創薬ターゲットを新たに見つけるのにAI(人工知能)が用いられることが増えており、一部の日本の製薬企業では既に創薬DXの取り組みが行われています。なかでも、塩野義製薬では新型コロナウイルス治療薬「ゾコーバ」(2022年11月承認)の開発において、AIをはじめとするデジタル技術を活用しました※2

今後は創薬だけでなく、臨床試験や製造、営業に至るまでの全プロセスでデジタル化が進んでいくことが予想されます。しかし、その実現には技術的課題やセキュリティリスクの克服が必要であり、製薬業界全体での継続的な取り組みが求められるでしょう。

AI創薬についてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

▶関連記事:AI創薬とは?注目される理由やメリット・デメリット、課題、活用事例をご紹介!



インターフェックスWeekで医薬品業界の現状や今後の展望について知見を深めよう

「インターフェックスWeek」は、医薬品・化粧品の製造に関するあらゆる製品やサービスが出展される展示会です。RX Japanが主催しており、再生医療分野に関する最新技術やサービスを紹介している「再生医療EXPO」も同時開催されます。

医薬品メーカーの担当者はもちろん、大学・国公立研究所の薬学研究者にとって医薬品業界の現状や業界動向について知見を深めるにはとてもおすすめです。

また、国内外を問わず多くの企業が来場し、商談や技術相談も活発に行われます。関連技術やサービスを提供している企業様は、ぜひ出展についても検討してみてはいかがでしょうか。

「インターフェックスWeek」の開催地・日程について以下にまとめます。

■インターフェックスWeek大阪
2025年2月25日(火)~27日(木)インテックス大阪

■インターフェックスWeek東京
2025年7月9日(水)~11日(金)東京ビッグサイト



今後の新薬開発にはデジタル化による効率化が必要

欧米諸国と比べてバイオ医薬品の開発が遅れている日本の現状に加え、薬剤費削減の取り組みが活発な昨今、日本の製薬企業が新薬開発を行うことは簡単ではありません。膨大な開発コストを要するバイオ医薬品では特に、開発プロセスを効率化することでコストを削減する必要があります。

そのため、製薬業界では創薬DXに注目が集まっており、一部の製薬企業では既に取り組みが始まっています。今後は創薬に限らず、あらゆるプロセスでデジタル化が進み、AI(人工知能)をはじめとするデジタル技術の必要性がさらに高まることでしょう。

「インターフェックスWeek」内では、あらゆる医薬品向けのDXソリューションが一堂に展示される「ファーマDX EXPO」も同時開催されています。医薬品の研究や製造、営業におけるデジタル化のヒントがきっと見つかるはずです。DX導入を検討している医薬品メーカーの担当者の方は、ぜひ「ファーマDX EXPO」へも来場してみてください。

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▶監修:武藤 正樹

社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ理事

神奈川県出身。1974年新潟大学医学部卒業、国立横浜病院外科医師、ニューヨーク州立大学家庭医療学科に留学、国立医療・病院管理研究所医療政策研究部長。国立長野病院、国際医療福祉大学三田病院、国際医療福祉大学大学院教授等を経て、2020年より現職。日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会代表理事


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