化粧品GMPとは?規格に適合させるメリットや認証取得の流れを解説
化粧品の製造・販売などに従事する方なら、1度は「化粧品GMP」という単語を見聞きした経験があるはずです。なかには、言葉自体は知っていても詳細は知らない方や、詳細も知っているけれど対応が難しいと感じる方もいるのではないでしょうか。
本記事では、主に化粧品の製造・販売事業に従事する方に向けて、化粧品GMPの内容を徹底解説します。「化粧品GMP認証取得を検討中の企業」と「化粧品GMP認証取得支援サービスの提供企業」とのマッチングに役立つ「展示会」もご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
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化粧品GMPとは
化粧品GMPを理解する前に、まずはGMPについて理解しましょう。GMPは「Good Manufacturing Practice(適正製造規範)」の略称で、製品の品質と安全性を保つために、製造業者や製造販売業者に求められる製造管理および品質管理の基準です。日本では、医薬品GMPは法制化されており法的拘束力を有する一方、化粧品GMPは「自主基準」であり、法的拘束力はありません。
GMPについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
化粧品GMPの概要
化粧品GMPとは、高品質で安全な化粧品を提供するために、主に化粧品製造業者の従業員・設備・製造・製品・原材料の取り扱いや実施方法を定めた“ルールブック”です。
日本化粧品工業連合会(2023年4月に「日本化粧品工業会」へ改組)が2008年に定めた化粧品の製造管理・品質管理に関する自主基準であり、2007年にISO(国際標準化機構)が定めたISO22716という国際規格に則っています。
ISO22716は化粧品GMPのガイドラインとなる国際規格であり、欧米、アジアなどの世界各国で国内法や自主基準として採用されています。
近年、日本の化粧品ブランドが海外に進出する機会が増えていますが、化粧品を欧米諸国やASEAN諸国に輸出する際にはGMP証明を求められる場合があるため、化粧品GMP(ISO22716)への適合は海外輸出を検討する企業にとってもメリットがあります。
将来的には国内でも取引先から化粧品GMP(ISO22716)への適合を求められる可能性があるので、まだ対応していない場合は、今のうちから対策を進めるほうが良いでしょう。
ISO22716とISO9001の違い
ISO22716は、化粧品業界に特化した国際規格です。「生産現場」や「製品の品質向上」を重視する内容で、適用範囲は生産、管理、保管、出荷など、主に化粧品の製造業者に関わるプロセスです。証拠として文書化や記録を要求する項目が多く、教育訓練の実施や、生産工場の構造設備に関する具体的な要求がある点も特徴です。
ISO9001とは異なり、ISO22716には国ごとに認定された認証機関が存在しないため、現在は認証機関が自主的に認証する「プライベート認証」の位置付けです。
一方、ISO9001は「品質マネジメントシステムに関する国際規格」であり、化粧品業界に限らず、あらゆる業界・業種に適用可能な品質保証に関する規格です。「顧客満足」を重視し、「経営者の責任」を明確化して、より良い製品やサービスを継続的に提供するための仕組みを構築・運用することを求めています。
ISO22716と比較して文書化を要求する項目が少なく、教育訓練や構造設備に関する要求もありません。製造・品質管理以外にも、経営・開発・物流・販売など幅広い範囲で適用されることが特徴で、システムを構築・運用する前に適用範囲を定めて文書化する必要があります。
ISO9001の認証には、国ごとに公式な認定機関が存在し、認証機関はこれらの機関から認定を得て認証を行っています。世界各国にも同様の認定制度があり、各国の認定機関が相互承認(IAF 相互承認)しています。そのため、IAF(国際認定フォーラム)に加盟している認定機関から認定を受けた認証機関の認証は、国内外問わず通用します。
化粧品GMPの三原則
化粧品GMP(ISO22716)の三原則は、次のとおりです。
- ヒューマンエラーを最小限に抑える
- 汚染および品質低下を防止する
- 高い品質を保証するシステムを構築する
いずれも、構造設備に関する「ハード面」と、文書化や社内教育の実施、管理体制の構築などの「ソフト面」の両面から対策を講じなければなりません。なお、上記のうち、1の「ヒューマンエラーを最小限に抑える」が最も困難で大きなウェイトを占めます。
化粧品GMP(ISO22716)の適用製品
化粧品GMPの適用製品には、化粧品以外にも様々な製品が含まれます。以下は、化粧品GMP(ISO22716)が適用される製品です。
- 化粧品
- 医薬部外品(医薬品GMPが適用される新指定・新範囲医薬部外品を除く)
- 口内清涼剤
- 殺虫剤(忌避剤を除く)
- 殺鼠剤
- 衛生用綿類
上記製品の「生産」「管理」「保管」「出荷」に関する基準が、ISO22716で定められています。「労働安全」「環境保全」「研究開発」「最終製品の物流」に関しては、対象外ですが、前提として各種法令(労働安全衛生法や消防法など)には従わなければならないので注意しましょう。
化粧品GMPの要求事項
化粧品GMPの三原則を実現するために製造業者が守るべきルールとして、ISO22716では以下の17項目が定められています。
- 適用範囲
- 用語及び定義
- 従業員
- 構造設備
- 機器
- 原材料及び包装材料
- 生産
- 最終製品
- 品質管理試験室
- 規格外品の処理
- 廃棄物
- 委託
- 逸脱
- 苦情及び回収
- 変更管理
- 内部監査
- 文書化
これらの要求事項(製造業者が守るべきルール)は構造設備に関する「GMPハード」と管理面に関する「GMPソフト」から成り立ちます。
それぞれについて詳しく説明します。
GMPハード
化粧品のGMPハードとは、化粧品製造所の構造設備に関する基準です。化粧品製造業の構造設備要件については、「薬局等構造設備規則」第三節で以下のように規定されています。
- 製品を製造するのに必要な設備・器具を備えていること
- 作業所は換気が適切かつ清潔で、作業を行うのに支障のない面積を有すること
- 製品、原料及び資材を衛生的に、かつ、安全に貯蔵するために必要な設備を有すること
- 製品等及び資材の試験検査に必要な設備及び器具を備えていること
GMPソフト
化粧品のGMPソフトとは、管理体制の構築、基準書・手順書・仕様書などの文書体系の構築や社内教育の実施などソフト面に関する基準です。具体的には以下のような項目が挙げられます。
- 製造管理・品質管理の組織・責任体制の整備
- 製造・試験検査に関わる文書(基準書・手順書・仕様書)の整備
- 手順書・仕様書に従った製造・品質管理の実施
- 記録の作成・保管
- 作業室の清掃、機械器具の洗浄、設備・機械器具の定期点検
- バリデーション(製造手順が適切であることの確認・文書化)の実施
- 教育訓練の実施 など
化粧品GMP(ISO22716)の三原則を満たして、高品質で安全な化粧品を製造するためには、GMPハードとGMPソフトの両面から対策を講じることが必要です。
化粧品GMPの認証を取得するメリット
化粧品事業者が化粧品GMP(ISO22716)の認証を取得すると、ビジネスを有利に展開できる様々なメリットがあります。
以下は、認証を取得するメリットです。
- 信頼性の向上
- グローバル市場で事業展開するために必要な競争力強化
- 品質の均一化・向上
- 製品回収リスクの低減
- 委託業者に対するアピール
各項目を詳しく説明します。
信頼性の向上
単に製造業者が「化粧品GMP(ISO22716)を遵守して製造している」と主張するだけでは、外部からは真偽を判別できません。
しかし、第三者から認証を受ければ、「基準を満たす活動を行っている」ことが客観的に証明でき、信頼性の向上につながります。
グローバル市場で事業展開するために必要な競争力強化
欧米諸国やASEAN諸国などに化粧品を輸出する際に、化粧品GMPの基準に適合する旨の証明を要求される場合があります。
少子高齢化により日本国内の人口が減少しているなか、今後も企業が成長し続けるためには、海外にも販路を広げ、積極的にモノやサービスを販売していく必要があります。グローバル市場で事業展開するために競争力を強化したいのであれば、化粧品GMP(ISO22716)の認証取得に向けて対応を進めるべきでしょう。
品質の均一化・向上
化粧品GMP(ISO22716)の認証を取得するためには、ハードとソフトの両面から社内体制を整備しなければなりません。認証取得に向けて対応を進めれば、結果的に品質の均一化や向上につながります。高品質な化粧品を安定的に供給するためにも、化粧品GMP認証を取得するほうが良いでしょう。
GMP(ISO22716)と ISO9001を統合することで、品質管理体制をさらに強化することも可能です。
製品回収リスクの低減
化粧品メーカーにとって、製品回収は最も避けなければならないリスクのひとつです。製品回収に陥った場合、製品の信頼性が低下し、無駄な回収費用が発生するだけでなく、企業やブランドの信頼性も低下し、売り上げや利益が減少して、経営を危うくすることにもなりかねません。
化粧品GMP基準に適合することによって、製品の品質が向上し、品質低下に伴うクレームの発生リスクや製品回収のリスクが抑えられるのは、大きなメリットだと言えるでしょう。
委託業者に対するアピール
自社製品以外に他社からの受託製造も行っている製造業者にとっては、化粧品GMP(ISO22716)の認証を取得していることは、委託企業に対するアピールになり、製造受託の機会を増やすことができるというメリットもあります。
化粧品GMPの認証を取得するまでの流れ
化粧品GMP(ISO22716)の認証を取得するまでの大まかな流れは、次のとおりです。
- 現状確認およびスケジュールの決定
- ISO22716規格の理解(研修の実施)
- ギャップ分析(化粧品GMPの要求事項と現状との間に存在する差の分析)
- 文書(マニュアル・手順書など)の作成
- 運用・教育
- 認証機関の監査を想定した内部監査の実施
- 是正処置
- 審査対応
- 認定
上記のうち、「ギャップ分析」と「文書の作成」が特に重要であり、おおよそ3~4ヶ月程度かかります。なお、認定を取得するために必要な期間の目安(上記の全プロセスを完了するまでに要する期間)は、1年~1年半程度です。
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化粧品GMP認証取得を検討中の場合や、GMP認証取得手続きに課題を抱えている場合、もしくは他の認証取得を検討している場合は、「インターフェックス Week」に来場して関連サービスを探すことをおすすめします。併催のセミナーも充実しているので、化粧品GMPへの理解を深めることも可能です。
化粧品GMPの認証を取得するなら、支援サービスの活用を!
化粧品の製造・販売事業を営むのであれば、化粧品製造に関する品質・安全性の国際規格である「化粧品GMP(ISO22716)」に対応するとよいでしょう。化粧品GMPの認証を取得すれば、「信頼性の向上」「グローバル市場で事業展開するために必要な競争力強化」「品質の均一化・向上」「製品回収リスクの低減」など多くのメリットを享受できます。
「化粧品GMP認証を取得したいけれど、どう対処すればいいかわからない」「社内に詳しい人材がいない」とお悩みの場合は、化粧品GMPの認証取得支援サービスを活用しましょう。
「化粧品GMP認証取得支援サービスを探したい」「セミナーで化粧品GMPへの理解を深めたい」という方や、支援サービスを提供・販売している企業は、ぜひRX Japan株式会社が主催する展示会「インターフェックス Week」への来場・出展をご検討ください。
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▶監修:村山菜奈(むらやま なな)
薬剤師。
6年制薬学部を卒業し、薬剤師免許を取得。OEMと自社ブランドを持つ化粧品メーカーの研究員として、主にスキンケア化粧品の処方開発・製品開発を担当。大学病院の門前薬局で薬剤師としても勤務経験あり。現在は、薬剤師や化粧品研究員の経験を活かして、医薬品や化粧品の正しい情報をわかりやすく伝えるライターとして活動中。
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